かやぶきの里とは 歴史的背景
京都の真ん中あたりに位置する南丹市美山町は、古き良き農山村の原風景が残る貴重な地域。なかでも美山町を代表する観光スポットとして人気なのが、「美山かやぶきの里」です。今では数少ないかやぶき屋根の民家が現存し、自然と調和したのどかな風景を楽しむことができます。コロナ禍以前には年間25万人ほどの観光客が、また現在も、休日には多くの人々が訪れているそう。今回は美山かやぶきの里の魅力をレポートします!
京都市内から車で約1時間半で、美山かやぶきの里に到着。野山に囲まれた一帯に、かやぶき民家が佇む景色を前に、一瞬、日本昔話の世界にタイムスリップしたような気分…!
美山町のなかでも、ここ北集落は約50戸のうち39棟がかやぶき民家と、特に多いエリアなのだそう。日本中からかやぶき屋根が姿を消すなか、その保存度が高く評価され、平成5年に日本の重要伝統的建造物群保存地区に選定されました。「保存地区の選定がもう少し遅れていたら、かやぶき屋根は『鉄板覆い』という構造の家ばかりになっていたかもしれません」と話す地元の方もいます。
地元の人々の長年の努力により、日本の伝統文化がこうして守られてきました。この集落にある建物の戸数は、江戸時代からほとんど変わっていないというから驚きです。自給自足で生活できる最低限の戸数が、脈々と受け継がれてきたといいます。一番古い建物は、今から約230年も前に建てられたのだそう。江戸時代からの歴史ある建物が今も見られるのは、とてもありがたいことです。
観光地としての美山かやぶきの里
コロナ禍での観光スポットとして最適!
美山かやぶきの里は屋外の観光地のため、コロナ禍に訪れるスポットとして最適。散歩しながら建物や自然を眺めるだけでもワクワクし、観光気分を満喫できます。また、飲食店やお土産屋さんといった集落内の施設は感染対策がしっかりと行われているため、三密を避けながらゆっくり楽しむことができます。なかには、屋外で飲食できるように工夫されている施設もあります。
ご年配の方であれば昔の日本の風景を懐かしんだり、若い人はおじいちゃん・おばあちゃんの家に来たような懐かしさを味わったり、外国人の方々は古い日本映画の世界に飛び込んだような新鮮さを楽しめたり…。訪れる人それぞれにさまざまな楽しみ方があるはず。
また、建築の歴史に思いを馳せたり、四季折々に表情を変える山や草花などの自然の風景を写真に撮ったりと、一日中いても飽きないスポットになっています。
ペットの入場制限がないため、最近はわんちゃんなどの散歩を兼ねて訪れる人も多いのだとか。大好きなペットとともに豊かな自然を満喫して、とっておきの思い出をつくるのもいいですね。
キャッチフレーズは「おもわず深呼吸したくなる美山町」
「観光客の方々に、五感を通してこの美山かやぶきの里を楽しんでほしい」という地元の方。見渡す限り豊かな自然に囲まれたこの集落は、空気がとても澄んでいます。「おもわず深呼吸したくなる美山町」というキャッチフレーズの通り、大きく深呼吸するとその空気のおいしさに感動し、日々の疲れがリセット。心も体も元気になるような気がします。
「夜にはまばゆいばかりの星空が見渡せ、夏になるとホタルを見ることもできます。訪れた方の五感を目一杯使って、楽しんでいただくことができる場所ですよ」と地元の方ならではの、美山かやぶきの里の魅力も教えてもらいました。
美山かやぶきの里おすすめスポット
府道38号線に面したお土産処には、73台停められる大きな駐車場があるため、ここに車を停めて、美山かやぶきの里を散策するのもおすすめです。鮮度が自慢の地元の野菜や特産品をはじめ、美山牛乳を使ったソフトクリームなどが味わえます。観光案内に便利なマップも用意されているので、立ち寄って旅の計画を立てるのにも便利ですよ。
お昼は、大型駐車場の程近くにある人気のお食事処を訪れました。美山産のそば粉を使って職人さんが手打ちした新鮮なそばは、遠方からわざわざ食べに来る人がいるほど評判の味。今回は、そばの甘味とのど越しが一番よく味わえるという、もりそばをいただきました。他に、地鶏の卵を使った玉子丼も人気だとか。コーヒーや紅茶、ぜんざいといった喫茶メニューもあるので、休憩のための立寄りスポットとして訪れてもいいですね。
現在、日中はざるそばや玉子丼などのテイクアウトも行っているそうなので、気になる人はぜひ利用してみてください。
美山町の中心部には由良川が流れ、川のせせらぎをBGMにかやぶき民家が点在する景色を眺めていると、とても癒やされます。由良川は西日本最大の原生林を源流とし、川の透明度が高く美しいのが特長です。
由良川の清流は、日本有数の鮎の釣り場としても知られています。毎年6月上旬に鮎釣りが解禁になると、全国から多くの釣り人が訪れます。清流で育まれた鮎の味は絶品だそう。
多くのかやぶき民家が集まる美山かやぶきの里は、集落の入り口にある赤いレトロなポストが目印! かやぶき民家は「北山型民家」と呼ばれる形式になっています。屋根は法隆寺の金堂といった社寺の建築にも広く用いられている入母屋造で、かやぶきの里では、屋根のてっぺんに千木と雪割りという部分を乗せるスタイルが大きな特徴です。
集落内を歩くと、南丹市指定文化財の「北稲荷神社のトチ」に遭遇。樹齢約400年、幹周はなんと約5m! 長年の歴史を感じさせる風格を携えていました。
また、屋根の葺き替えに使う茅を干している「茅塚」といった、普段はなかなか目にすることができない貴重な光景も目にすることができました。「茅」とは、屋根の材料となる草の総称。主に、ススキやチガヤといったイネ科の植物が材料になります。昔は、多年草のススキなどを育てて刈るための「茅場」という場所が日本のいたるところにあったそうです。美山かやぶきの里では、今では貴重な茅場を見ることもできます。
かやぶき民家の歴史や美山町の暮らしに興味がわいたら、ぜひ「美山民俗資料館」へ。ここは、保存地区の選定を受けた平成5年に開館。200年ほど前の農家のつくりを体験できる建物を利用した資料館で、館内の隅々から昔の暮らしぶりを知ることができます。
また、地元のおばあちゃんたちが、かやぶき民家での生活について教えてくれるので、楽しみながら知識を得ることができますよ。「美人になる」と評判の美山の薬草茶を飲みながら、当時の暮らしに思いを馳せてみてはいかがでしょう。縁側から眺める美山の景色もとても風情があります。一度訪れてみる価値のあるスポットです。
集落内にはおしゃれなカフェが2軒あるのもうれしいポイント。今回はそのうちの1軒、美山民俗資料館から北に向かって歩くとあるカフェにお邪魔しました。ここは、卵を使ったスイーツが自慢のお店。美山かやぶきの里にある養鶏場で放し飼いにされて育った鶏の新鮮な卵も販売しています。今回はその卵と絞り立ての牛乳を使ったプリンをいただきました。濃厚でとっても美味! 瓶に入った素朴な佇まいがかわいらしく、かやぶき民家を背景に、思わず写真をたくさん撮ってしまいました。「シフォンケーキや美山スムージーもおすすめ」とのことなので、次回訪れたときはぜひ頼んでみたいと思います!
宿泊について
実は、美山かやぶきの里には2軒の民宿があるため、宿泊することも可能。これまで、年間の宿泊客の約7割が海外からの観光客だったそう。ホテルや旅館では味わえない「民宿ならではの特別な体験」を求めて宿泊するのだといいます。
たとえば、そのうちの1つは和室3室のこぢんまりとした味わいの民宿。ご当地食材をふんだんに使ったいなか料理を味わえます。人気は、地鶏のすき焼き。さらに、春は山菜、夏は鮎、秋はきのこ、冬はぼたん(イノシシ)と、季節ごとに旬の味を楽しめます。いろりを囲みながら、ゆっくりと流れる時間を堪能できます。事前に予約をすれば、ランチを楽しむことも可能なので、ぜひチェックしてみてください。
「旅行で泊まるのはホテルばかりで、民宿にはしばらく泊まってない」という人は、この集落内の民宿に泊まったら、とても感動するはず。実際に、茅や木のぬくもりに触れ、田舎暮らしの良さを肌で感じることができます。地元の食材を使った料理を堪能し、自然豊かな美山の暮らしを体験すれば、日々の疲れも吹き飛びますよ。
車で5分ほど上流の府道38号線沿いには、キャンプ施設や露天風呂つき大浴場を併設した大型の施設があります。夏場は目の前を流れる由良川で思う存分遊ぶ子どもたちの姿で、大賑わいです。毎年、7月後半から8月後半の週末は、鮎のつかみどりができる家族向けのイベントを開催(要予約)。透明度の高い清流なので、水中メガネを使わずに鮎や稚魚を確認することができます。貴重な体験に、子どもから大人まで夢中になってしまうそうですよ。
たっぷり川遊びをして疲れたら、のんびりとお風呂に浸かって心身をほぐしましょう。また、併設のレストランでは、京地どりすき焼きや和のジビエといった地元の名物料理を味わうこともできます。夏場限定の美山の天然鮎料理もおすすめです。ログハウス調の宿泊施設に泊まっても良し、日帰りで立ち寄るも良し。小さい子ども連れの家族にイチオシのスポットです!
自然豊かな美山かやぶきの里は、三密を避けてゆっくりと観光を楽しむことができる絶好のスポット。コロナ禍によるストレスや疲れが溜まりがちなこの時期、つかの間の癒やしの時間を過ごしてみてはいかがでしょう。